ちょっとシャレにならない猛暑が続いておりますね。
なんでも、けっこうな数の病人や死者まででているとか・・・日本の夏は恐ろしい季節です。
さて、宿泊研修があったり東京にお買い物したりしてぜんぜん消化できなかったツアー雑記を消化していきます。
我々は、次なる目的地へと山海に車を滑り込ませていくのであるが・・・
こんな道である。
勾配は最大で17%というド級の坂、あまりみないような(写真の)くねくね道注意の標識。
カーブと足回りが優れているルーテシアだからこそこんな道も苦にはならないが・・・
田舎みちにひょこっと建っている電柱。こちらでは見かけないようなガイシがこれでもかと使われた構造が面白い。
町中の送電線よりも高圧電流を扱っているのだろうか・・・?
林道〜スカイラインと、くねくねする道をかなり楽しんだころ、突然にそいつは現れる。
停車してからの写真だが、左の道ばたに、なにかさび付いたモノが見えるであろうか。
ここは深い山中。事前にGoogle先生により情報を得ていたものの、やはり驚きとともに発見に至ったものは・・・?
通りからこんなに近くに、トラス状の鉄構造物が見える。
この時点でわかる人には一発でわかるだろう、山の中、そしてこのカタチ。
我々は感嘆の声を発しながら、カメラか片手にじわじわと近づいていく。
そう・・・なんと、スキー場リフトの遺構である。
きれいに真っ茶色に錆び付いてはいるが、緑の海の中、カタチはそのままにじっと佇んでいる。
よく見ると、搬器(イス)もついたまま、ほぼ完全な形で錆び付いているのがわかる。
ここはかつて「浅間温泉スキー場」として営業していたスキー場の遺構だ。
廃止年月は定かではないが、40年ほど前には廃業していたというので、その間、ずっとここにこのリフトはあったことになる。
この廃リフトは、機能していた時のままの姿で山の中へと続いている。
構造的に見て、最初に見たのは「降り場」であるので、架線沿いに歩く。
とはいっても、手入れされなくなって相当経っているので、基本的に森の一部だ。歩きにくいし、何よりもアブだかハエだかの羽音が周囲に地鳴りのように常に鳴り響いていて若干不気味である。
(結局この羽音の正体は最後まで不明であった)
鉄塔や搬器を巻き込んで生長している木々。
これをみると、本当に40年経って居るんだなと納得させられる。
幼い頃からスキーをしているσ(^^)でも、なかなか見ないような古い形式のリフトだけに・・・いや、もう今後はこういったトラス鉄塔むき出しのリフトはなくなる一方なので、撤去されずに残っているというのは貴重な遺構なのではないかと思う。
リフト架線をかすめるように立派な立木が生えている。
リフト稼働時は、完全に周囲は借り払われているはずなので、この木は廃止後に根付いたものと思われる。「廃美」とでもいうべき構図だ。
そして、緑の木々と錆び付いた遺構のコントラストは、人間の営みと自然の生み出した芸術作品である。これはもう、現地に行かなければわからないであろう。事実、金を払って楽しむはずのテーマパークや美術館よりもずっと楽しんでる我々がいるのだから・・・
シングルリフト一本分・・・というと、滑走なら瞬時に終わってしまうところだが、夏の森と化したリフト一本は長かった。
乗り場の様子はと言うと・・・完全に木の土台になってしまっていた。
写真左隅に見える小屋はリフト機材を置いていた小屋で、オイルの缶やドラム缶がそのまま残っていた。
乗り場の鉄塔真下に、降り場では見られなかった動力(ヤンマーディーゼル製エンジン)が遺棄されており、40年経った今でもオイルのニオイとともに居る。このあたりは、前回の廃ツアーで見た(レポしてないけど)廃ロープウェイ遺構に通じるものがある。オイルのニオイって風化しにくいんだなぁとしみじみ。
この巨大なエンジンも屋根に覆われていたであろうが、その部分はすっかり朽ち果ててしまって、今やエンジンはその重厚な体躯を風雨にさらすのみである。
我々は「アホ」である。
このためにゴーグルとニット帽を用意してきたのだ。
そしてあたかも現役のリフトのように「乗降シーン」を撮影した。う〜ん、アホだ。
搬器が来て「はい、どうぞ〜」と対応するスタッフと、リフトに乗ろうとする客の図である。
(実際に荷重はかけていないし、ほとんど触れてもいない。遺構を故意にいじったり破壊したりするのは廃を愛する者として絶対にやってはならないことである)
誰もいない深い山中、このシーンを撮影して馬鹿笑いしていた。
なお、この乗り場周辺には写真のような「年代物の缶」がいくつか落ちている。
どれも40年前のものではないようだが、相当な古さを醸し出している。
乗り場付近の搬器は、まだ座る部分の板が生きているものがあった。
まさしく40年の風雨に耐えた「生き様」を見せつけてくるようで、頭が下がる思いだった。これからも、いつか朽ちるその日までこの姿をとどめておいて欲しい。スキー場を愛する我々は心からそう願ってやまないのだった。
(実際、山奥で地味な物件のためか、破壊行為や落書き行為をするDQNも来ないらしく、非常に良い状態であるのが何より救いだった)
さて、雨もぱらついてきたし車に戻るか・・・
しかし、下っても長い森の道を登り返すのはかなりきつかった。汗だくで息を切らせながらじっくりと登っていくしかない。
途中でいくつも鹿の糞の集合体を見た。鹿が多い山なのだろう。出会うことはなかったが。
山と廃リフトを満喫し、汗を拭きつつドリンクを飲みながらリフトを見下ろし余韻を愉しむ。人の全くいない空間。廃の醍醐味である。
このあと今宵の宿に向かったのであるが、その途中で「現役スキー場」に立ち寄ったので比較がてらご覧いただこう。
ここは「番所ヶ原スキー場」という現役の小さなスキー場だ。
やたら新しいペアリフトは最近掛け替えたらしく、廃リフトとの40年の差が顕著に表れている。
(新しいリフトは搬器が脱着可能なため、シーズン外は外してある)
乗り場の様子も全く違う。強度の高いコンクリートでシンプルに作られ、動力もその上にあって目立たない。ある意味、味気ない。廃リフトに見られた「ここをコイツで支えてます」感もないし、時代が進むといろいろつまらなくなってしまう。
シーズン外のスキー場を新旧で堪能した我々は、いよいよ雨が降ってきた夕刻の山道を、宿へと向かうのであった。
次回完結。