何の気なしに三回に分けたが、三日連続で雑記るだけでもなかなか大変だ。
こういうときは、サボり根性丸出しの自分に対して「縛り」を事前に設定しておき、実行せざるを得ない状況を作り出す。こうでもしないと、有言実行不能なアホなのだ、σ(^^)は。今回の縛りは「写真のファイル名」。事前に三日分日付入りでアップロードしておいたため、日付が変わる前に雑記を書かないとズレる。まぁ、日付などは設定し直しできるのだが、こうして雑記を書いている以上、些細なことでもなかなか効果覿面なのだと実感している。
よくわからない話をしたところで、本題に移ろう。
三日目・・・見事な雨である。
天気予報は嫌なときほどよく当たる?その通りである。朝から、鳥羽の海面を雨粒が叩く音が響き渡っていた。まぁ、何はともあれ出発だ。雨といえども観光できる場所はいくらでもあろう。
旅館の従業員の超頑張った見送りに少々心打たれながら向かったのは、伊勢志摩方面での名物「夫婦岩」だが、土砂降りの様相を呈してきたためキャンセル。
そこでやってきたのが「伊勢河崎・商人館」である。
江戸時代に水運の要所として栄えたこのあたりの町並みを再現した一角にある、かつての商人の豪邸を一部当時のまま公開している一軒を見学できる。国の登録有形文化財にも指定されている由緒正しい商家である。
ここには商人の住む家の他に蔵が三軒ほど建てられていて、そのどれもが立派な作りだ。当時の、伊勢参りの参拝客で賑わっていた方面にも、生活物資などを供給する重要な拠点であった様子がうかがえる。
商人の家には小さいが纏まった庭園がくっついていた。
木造の古家は、梁や柱なども相当良い木を一本まるまる使用していたりと、かなり重厚で豪華な作りとなっていた。蔵の扉などは防火性を考慮した、実に重々しく頑丈なもので、感心してしまった。
この町はその歴史と町並みで観光スポットになっているようだが、いかんせん知名度もあまりないため、雨のせいも手伝ってか人気はまばらだった。
ここで、雨が小降りになったので、引き返してアレを見に行くことにした。
伊勢は二見の夫婦岩である。江戸時代の浮世絵にも見られるほどに有名な双岩。
岩と御来光や満月をセットで眺めることができる時期があるため、写真愛好家にはなかなか有名なスポットだ。残念ながら強くなってきた雨によって、ゆっくり眺める時間もままならなかったわけだが。・・・あれ?昨日伊勢参りしたはずでh
なんとこの注連縄、重さ40kgもあるのだが、年に三度も張り替えるらしい。御奉納のためらしいが、なかなか凄いことをやるものだ。その儀式は見てみたい。
さて、伊勢志摩方面の見所は終わった。本日は最終日なので、なるべく大阪に近づいてからゆっくりしておきたい。というわけで、メインには奈良が選ばれた。
昼過ぎに到着したのは「唐招提寺」。世界文化遺産に登録されている。
入ってすぐに目にできる圧倒的な存在感の「金堂」は国宝。建立以来1250年も天災に遭うことなく現代にその姿をとどめる。平屋で地味な印象だが、実にでかい。写真だと伝わりにくいかも知れないが。
そしてなによりも、この奈良時代の貴重な金堂が大修理工事されたのが記憶に新しい。その様子は、偶然にも以前テレビで視聴していた。σ(^^)の稚拙な解説よりも、とあるサイトから一文を引用させていただいたのでそちらを読んでいただこう。
「2000年、金堂の大修理工事が始まった。金堂全体を覆う巨大な素屋根がかけられ、本尊の盧舎那仏をはじめとする堂内のすべての仏像が他所へ移された。2001年夏には鴟尾(しび)をおろし、約4万枚の瓦もおろして、建物の解体作業を始めた。金堂の全面的な解体修理は、建立されて以来、初めてのことだった。」
そして昨年末にこの工事は終わった。なんと、10年に及ぶ大工事だったのだ。4万枚の瓦は、すべて当時の焼き方で作り直され、鴟尾(屋根頂点両端のシャチホコのようなもの)にいたっては、日本有数の焼き物職人をはじめ大勢の手で、何ヶ月もかけて慎重に作り直されたと聞く。現代の技術を持ってしても至難のものであったという。
そういう話を知っているから、というわけではないが、なかなかに感慨深いものがあった。そういえば金堂の柱には、くさび形の真新しい木片がいくつか打ち込まれていたが、それも柱の修復工事の一環だったのだろう。
他の寺に知名度ではやや劣る感のある唐招提寺だが、今現在においては最も注目されるべき建築物かも知れない。建立が759年だから、京都のどの寺よりもよっぽど古参なのだ。
さて、唐招提寺をおいしくいただいたところで、徒歩でいける寺を回ろう。といっても小さな子供連れだし、今日中に東京に帰るため、歩く距離は散歩程度である。
道中で「町で見つけたヘンなもの」的な手書き標識や、名も無き(?)寺の入り口屋根の鬼瓦に心奪われる場面もあったりした。にしても、この標識はヘン過ぎる。のわりに、デカくて異様に目立つ代物だ。
そうこうしてる間に到着したのが「薬師寺」。当然世界遺産である。
ここには、遠目からもわかるランドマーク的な有名伽羅である双塔があるのだがいかに。
薬師寺はなかなか敷地も広く、参拝ルートは敷地外面からぐるっと内部に回り込むような経路をとる。そのさなかにも、貴重な建築物を目にすることができる。
このような回廊が建設されていて、その外側を歩きながら見学をする。この時点で金堂及び双塔は目視できないため、ある種のワクワク感があるのだ。しかし、急ぎ回廊を回ってはならない。なにせ、ここにも「国宝」である東院堂が控えているからだ。写真を撮る際は意識していなかったため、全景を撮り忘れてしまった。
そして、いよいよ広場にさしかかる。メインの三物件がいまここに!
と思ったら・・・東塔はなにやら工事中の様子。
帰って調べてみると、どうやら唐招提寺に続いてこの薬師寺東塔も10年工事プロジェクトで修復されるそうなのだ。そして、工事は始まったばかり。ああ、時期が悪かったか・・・がっかりしてしまった。
この東塔こそ奈良時代から現代まで現存する貴重な伽羅で、国宝指定されている重要物件だったのだ。とにかく、薬師寺はこの東塔が唯一の歴史の生き証人なのである。
本来メインであるはずの金堂や、より派手な西塔は扱い的にはこんなものだろう。
なにせ、両方とも火災で焼失、再建されたのはかなり最近の話だからである。もちろん、どちらも歴史的価値は皆無なので重要財指定はされていない。まぁ、まだキレイなので写真写りが良く、映えるのが救いではある。
しかしながら金堂内部となると話は別である。一気に国宝連発となるので、絶対に見学しておきたい。特に、藥師三尊像はもう見なければ後悔必至な逸品。その大きさもさることながら、展示空間の荘厳な雰囲気に何か畏れのようなものを感じることができるだろう。
以上、駆け足で奈良編を綴ったが、やはりこういうものはじっくりと腰を据えて見学するべきである。できれば仏閣の頂点に位置する法隆寺や、鹿や大仏で代名詞的な知名度を持つ東大寺なども訪れたかったが、まあ次回があるだろう。
旅の総括としては、天候も気温も不純だったがなかなか有意義な旅であったと思う。孫と共に過ごす両親もリフレッシュできたようだし、σ(^^)もひさびさに、繰り返される毎日からくる心の汚れを落とした気分になった。
旅は、必ず行くべきだと思う。そこで日常から脱した空間に身を置き、ゆったりと過ごすことで得られるものがある。それは、普段考えもしなかった事をじっくり思案できたことであったり、ある閃きのようなものであったり、いろいろであろう。そして、わずかながら、だが確実に心が豊かになる。
薬師寺境内の、時期を終えながらまだ枝に残る梅の花が美しかった。